パトコアが構造変換アイデア提示ツールを開発
構造変換ルールに基づき自動生成、MMP解析データの活用も
2013.06.29−パトコアは、創薬研究における化合物の合成展開に際して、分子構造を変換できる可能性を網羅的に示すことができる「CRAIS Transformer」(CRAISトランスフォーマー)を開発した。構造変換のための信頼性の高い知識ベースをあらかじめ装備していることに加え、社内で蓄積した知識をルールとして組み込むことも可能で、合成研究者の世代交代にともなうノウハウ継承にも役立つとして注目される。
CRAISトランスフォーマーは、構造変換ルールに基づいて、入力構造から改変構造を自動生成する、いわば構造変換アイデア提示ツール。ルールベースとしては、京都大学の藤田稔夫名誉教授が開発した「EMIL」(ハンガリーのコンピュードラッグ社)に搭載されている変換例が標準装備されている。既知の医薬・農薬をもとに、生物学的に等価な約6,700件の変換例が収められている。来年にはさらに、英デジタルケミストリーが開発している「BIOSTER」からも約2万6,000件の変換例を収録する計画である。
操作方法は、もとになる構造をスケッチし、ワンクリックするだけ。ただ、変換候補として示される構造が多すぎる場合もあるため、さまざまな制限をかけることが可能。指定した部分構造だけを変換の対象としたり、特定の構造を持つものを排除したり、同一のフレームワークを持つ構造を除外したりすることができる。また、「LogPが5以下」「分子量が入力構造よりも小さい」など、物性値による制限もかけられる。
さらに、マッチドモレキュラーペア(MMP)解析によって得られた情報を活用することも可能。これは、構造や変換に関する知識を抽出するデータマイニングの観点で注目されている技術で、分子構造を比較して一つのフラグメントが異なる分子ペアを見つけ出す解析手法を指す。この分子ペアの異なる部分を変換ルールとして抽出することで、合成研究者が経験的に行ってきたノウハウを具体化することができる。また、構造と活性値/特性値を合わせて解析することにより、フラグメントの変換が活性値/特性値に及ぼす影響が明らかになるというメリットもある。
しかし、こうしたMMP解析データをうまく活用できていないケースが少なくないという。今回のCRAISトランスフォーマーを利用することで、これらの解析データを変換ルールとして取り込むことが可能。また、構造変換に際しての制限条件を定義することにも利用できる。例えば、Caco2(膜透過試験)の値の差分がマイナス1以下になるルールだけを適用するなどの指定が行える。値の範囲も自由に設定できる。
動作環境は、Windowsのクライアント/サーバーシステムで、データベースとしてオラクルが必要。
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<関連リンク>:
パトコア(トップページ)
http://www.patcore.com/
パトコア(CRAISトランスフォーマー製品紹介ページ)
http://patcore.com/jp/product/crais_transformer/