アドバンスソフトが「Advance/PHASE」の最新版3.2をリリースへ

ハイブリッド汎関数計算を大幅高速化、GUI機能も強化

 2013.08.06−アドバンスソフトは、ナノ材料設計に適した第一原理計算ソフトウエア「Advance/PHASE」の最新バージョン3.2を今月末から提供開始する。電極材料などの解析に対応した新手法を導入したほか、アルゴリズムの改良でコアとなる計算時間を大幅に高速化。GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)も一新し、計算結果の可視化などがシオンプルに行えるようになった。

 「Advance/PHASE」は、文部科学省プロジェクト「革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発」(2005〜2007年度)での開発成果をベースに製品化が図られたもの。プロジェクトで公開されているソフトに対して、「Advance/PHASE」は独自の機能拡張が施されてきており、とくにバージョン3でその傾向が強くなっているという。公開ソフトも進歩しているため、将来的にはすり合わせが行われる可能性もあるだろう。

 さて、今回の最新版3.2だが、計算エンジンの強化として、ESM(Effective Screening Medium)法の導入、スピン−軌道相互作用による磁気異方性の計算、ハイブリッド汎関数計算の高速化、厳密交換汎関数計算(EXX-OEP法)の採用−などが盛り込まれた。

 ESM法は、表面や界面の計算に適した手法で、表面が溶媒と接触していたり、付加電荷によって帯電していたりするモデルを扱うことができる。このため、平行板コンデンサーとして電場の影響を考慮するなど、電極材料への適用が可能となる。いくつかのアカデミックコードはあるが、商用ソフトでESM法が利用できるのは今回の「Advance/PHASE」が初めてだという。

 また、今回大幅な高速化が達成されたとして注目されるのが、ハイブリッド汎関数計算。これは、密度汎関数理論においてハートリーフォック(HF)厳密交換項を一般化勾配近似(GGA)を一定割合で混合することにより、計算精度を高める手法。バンド構造の計算で多用されるが、HF厳密交換エネルギー計算に非常に時間がかかることが問題だった。バージョン3.1では高速化アルゴリズムを組み合わせることで、精度と速度のバランスで3段階の計算設定ができるようにしていたが、最高精度と最高速度の速度比は8倍程度にとどまっていた。

 今回、計算部分のボトルネックを独自アルゴリズムで解消することにより、バージョン3.1の最高速モードに対して178倍の改善を実現した。バージョン3.1の最高精度モードと比べると1,424倍の高速化に当たるという。例えば、バージョン3.1の最高精度で1,200時間かかった計算が、バージョン3.2では49分で終了することになる。

 さらに、ハイブリッド汎関数法は計算にパラメーターを使用する必要があるため、パラメーターを使用しないEXX-OEP法にも対応させた。精度はハイブリッド汎関数法とほぼ同等だということだ。

 同社では、バージョン4以降でさらに高精度なGW法を実装する予定だが、これは計算量としてはさらにヘビーな手法となる。ただ、やはり厳密交換エネルギー計算がボトルネックであることは同じなので、今回のアルゴリズムを使用するとGW法を高速で提供できる可能性があるようだ。

 一方、バージョン3.2ではGUI「Phase Viewer」もさらに使いやすくなっている。新しい計算機能であるESM法やスピン−軌道相互作用法に対応していることはもちろん、計算実施条件が入力しやすくなった。チェックボタンが新たに設けられ、条件設定に不具合があると、ガイド表示がポップアップする。チャートの表示も簡単に行える。GUI機能については、今後も重点的に強化していくとしている。










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<関連リンク>:

アドバンスソフト(トップページ)
http://www.advancesoft.jp/

アドバンスソフト(Advance/PHASE 製品情報ページ)
http://www.advancesoft.jp/product/advance_phase/


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