菱化システムが化合物の作用機序・適応症などを予測するシステム
3,600万件のライブラリーもとにモデル化、スペイン・プロウス社と販売契約
2013.07.04−菱化システムは、スペインのプロウスインスティチュートが開発した創薬研究・医薬品開発支援システム「SYMMETRY」を新製品として販売開始した。3,600万件という大量の化合物ライブラリーをもとに、ADME(吸収・分布・代謝・排出)および毒性、作用機序、適応症などを予測するシステムで、探索研究の段階で候補化合物のスクリーニングに役立つことに加え、既存薬の再開発やライフサイクル最大化のための検討にも活用できる。
「SYMMETRY」は、作用機序予測に特化した「BioEpisteme」をベースに、大幅に機能強化して新登場したシステム。開発元のプロウスインスティチュートは、学術出版社のプロウスサイエンスを母体として設立された企業で、2007年9月にプロウスサイエンスがトムソン・ロイターに買収されたあとも、米食品医薬品局(FDA)との安全性モデルに関する共同研究などを通し、独自のソフト開発を続けてきていた。
とくに、50年以上にわたって蓄積してきた化合物情報が大きな武器。3,600万というケタ違いの化合物ライブラリー「PSMEL」(Prous Institute Small Molecular Entities Library)を構築しており、SYMMETRYにはこれをもとに作成した予測モデルが多数搭載されている。それらのモデルについて、バリデーション結果などの詳細な情報を参照することができるほか、モデル構築機能を用いてユーザー独自のモデルを作成することも可能。
具体的なモデルをあげると、まず作用機序モデルはターゲットと化合物の相互作用を予測することが可能。ターゲットは、2型糖尿病、がん、神経可塑性に対応している。また、作用機序が明らかになっていないものの、特定の疾患に活性があると報告された化合物を含めたトレーニングセットで構築された治療活性モデルも装備している。
さらに、薬物動態モデルは、チトクロームP450同位酵素やPGPなどのトランスポーターに対する定性的モデルに加え、年内に分布容積、血漿クリアランス、固有クリアランス、血漿たん白結合、吸収、生物学的利用能などのモデルが追加される予定。
毒性モデル(前臨床毒性試験のエンドポイントを推定)と副作用モデル(薬物間相互作用などによる副作用を予測)は、FDAとの共同開発によるもので、分子作用機序ベースの毒性モデルも開発中だという。そのほか、遺伝子オントロジーモデルには遺伝子−化合物相互作用モデルと、遺伝子クラスターモデルが含まれる。これらの複数のモデルを組み合わせて解析するコンセンサスモデルにも対応している。
とくにユニークなのは作用機序モデルで、すでに市販されている薬や開発中の薬の新しい効能や適用領域を探索したり、付加的な治療効能の特定や登録前に特許範囲を幅広く保護したり、未発見の作用機序や新たな効能をみつけるためのデータマイニングを行ったり、天然物から分離した分子のスクリーニングを行ったりするなどの応用が可能だという。
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<関連リンク>:
菱化システム(科学技術システム事業部トップページ、記事掲載時点で同製品へのリンクはなし)
http://www.rsi.co.jp/kagaku/cs/index.html
プロウスインスティチュート(トップページ)
http://www.prousresearch.com/
CCSnews(BioEpisteme発売時の記事)
http://homepage2.nifty.com/ccsnews2/2006/2q/2006_2Qrsibioepisteme.htm