米アークスパンが日本市場でELNなど本格販売開始

外部連携型R&Dに対応、クラウドベースで即時展開可能

 2014.05.13−米アークスパンはこのほど、日本市場で本格的な事業を開始した。電子実験ノートブック(ELN)などクラウド型の医薬R&D支援ソリューション「ArxLab」(アークスラボ)を売り込んでいく。新薬研究が社内完結型から、外部のCRO(医薬品開発受託機関)など外部パートナーとの連携型へと変化していることを受け、社内と社外の研究ワークフローをクラウドベースで統合する機能を提供する。次世代型のELNなどとして大手製薬会社への導入を狙うほか、クラウドの低コストや簡便さを生かして創薬ベンチャーなどもターゲットにしていく計画である。5月に開設した日本オフィス(宇佐明人代表)も、順次陣容の拡大を図る。

 同社の「ArxLab」には、当局の規制対応や高度なセキュリティを実現したELNシステム、研究で扱うADC(薬物複合体)、細胞株、タンパク質、オリゴ糖、低分子化合物、混合物などさまざまな情報をデータベースに登録するレジストレーションシステムのほか、試薬管理システム、アッセイデータ管理システムなどがアプリケーションとして揃っている。すべてクラウド型のサービスとして提供され、ウェブブラウザーを通じて使用できるため、端末へのインストールは不要で、OSも選ばない。デスクトップ、ノート、タブレットと、あらゆる環境に対応できる。

 現在、既存ユーザーの半分は米国の製薬会社で、残りの半分ほどはその製薬会社の仕事を請け負っている中国のCROだという。プロジェクトを速やかに立ち上げ、終了すればすぐに撤収できるようにするためで、現実にCROだけに「ArxLab」を使わせ、自社ではオンプレミスのELNを使用するユーザーもいる。

 実際、同社はELN市場では後発となるため、既存システムとの共存・連携を前提にした製品づくりが行われており、CROから製薬会社へ提供されるデータを変換して、その製薬会社が使用しているパーキンエルマーやアクセルリスなどのELN製品が管理するデータベース(薬理、化学、インビボ、インビトロなどの区分あり)へ直接格納することが可能。ケミストリーエンジンなどのプラットホームにはハンガリーのケムアクソンの技術を採用しているため、構造式描画ソフト「ChemDraw」(パーキンエルマー)、ミドルウエアの「Pipeline Pilot」(アクセルリス)との統合も行える。

 ソフトは多言語対応となっており、ブラウザーの言語設定を認識して、ログインすると自動的に日本語で表示される。ELNでは、化学や生物、分析など、利用者に合わせたテンプレートが用意されていて、トレーニングをしなくても使い方はわかりやすい。実験ノートに貼り付ける各種ファイルもまとめてドラッグ&ドロップでアップロードできるが、アップしたファイルをプレビューする場合はサーバー側でPDFに変換されるので、元のファイルサイズが大きくても軽快に内容を確認できる。

 検索も、グーグルライクなキーワード入力のほか、構造式での検索、データフィールドを指定して検索条件を入れるアドバンスドサーチまで、オンプレミスのELNと比べても遜色がない。

 また、管理者でログインすれば、ユーザープロファイルでアクセス制限も自由に設定できるほか、グループを設けて一律にポリシーを適用することも容易。データバックアップはアークスパン社のデータセンター側でも行われるが、管理者モードを利用して、オンデマンドで社内にダウンロードしてデータの複製を作成することもできる。

 同社の日本オフィスは、すでに潜在顧客へのコンタクトを開始しているが、デモンストレーションの依頼なども来はじめているという。業界におけるELNの既存のビジネスモデルでは、ベンダーがシステムインテグレーターと協調してシステム構築を行うケースが多いが、「ArxLab」はコンビニエンスなシステムであるため直販を中心に展開していく考え。このため、日本のスタッフも随時増やしていく。

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<関連リンク>:

米アークスパン(トップページ)
http://www.arxspan.com/


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