ICH M7 ガイドラインで毒性予測ソフトの販売競争が過熱

QSAR手法で毒性評価、変異原性試験を代替

 2014.07.24−日米欧医薬品規制調和国際会議(ICH)のM7(潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中 DNA反応性(変異原性)不純物の評価及び管理)がステップ4に達し、近く正式にガイドライン化されることを踏まえ、ソフトウエア業界の動きがあわただしくなってきた。毒性予測ソフトによる解析で陰性が示されれば、実際の毒性試験が免除されるという内容を含んでいるため、ソフトの利用者が大きく広がるという期待でベンダー側は色めき立っている。

 M7ガイドライン(案)は昨年にパブリックコメントの集約が終わっている。中身自体はわかってきているため、今年に入ってベンダー側・ユーザー側ともに対応準備を急いでおり、関連分野をカバーするCBI学会(情報計算化学生物学会)では今年の5月に研究講演会を開催。毒性予測ソフトの主要ベンダーが一堂に会して講演とデモンストレーションを実施した。

 M7ガイドラインは、原薬および製剤に低レベルで存在するDNA反応性(変異原性)不純物の評価と管理について推奨される手順などをまとめたもの。M3「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」を補完する位置づけにある。とくに、コンピューターによる毒性評価法を明記していることがポイントで、知識ベースと統計ベースの2種類のQSAR(構造活性相関)手法で細菌を用いた変異原性試験の結果を予測し、ともに陰性であれば実際の試験が免除される。このことは、薬物のその後の開発方針や申請スケジュールに大きく影響するため、今後は積極的に毒性予測ソフトを活用する方向にドライブがかかると期待されている。

 CCSnewsの「最新CCS一覧表」を調べると、毒性予測機能を持つソフトとして、BIOVIA(アクセルリス)の「Discovery Studio TOPKAT」「Discovery Studio ADMET」、富士通九州システムズ(FJQS)の「ADMEWORKS」、英Lhasaの「Derek Nexus」(代理店はCTCライフサイエンス)、米リードスコープの「Model Applier」(同CTCライフサイエンス)、スペインのプロウスインスティチュートの「SYMMETRY」(同菱化システム)、米マルチケースの「CASE Ultra」(同インフォコム)、英オプティブリアムの「StarDrop」(同ヒューリンクス)、加ACD/Labsの「Percepta」(同富士通)、米シミュレーションズプラスの「ADMET Predictor」(同ノーザンサイエンスコンサルティング)、ハンガリーのコンピュードラッグの「HazardExpert」(同インフォコム)−などがピックアップできる。

 このうち、知識ベースの予測ソフトは「Derek Nexus」と、これをモジュールとして組み込んで使える「StarDrop」だけで、あとはすべて統計ベースの予測ソフトとなる。M7ガイドラインには特定のソフトの名称などは指定されていないため、とくに統計ベースのソフト間の競争が激しくなりそう。5月のCBI学会の研究講演会では、Lhasa、マルチケース、富士通九州システムズ、リードスコープ、プロウスインスティチュートがプレゼンテーションに参加している。

 この分野でICHに先行した取り組みを行っている米食品医薬品局(FDA)は、コンピューターによる毒性評価の実績が豊富で、モデル構築に利用できる毒性データの提供も行っているとされる。これらのソフトのいくつかも、FDAと共同で開発したことが特徴になっているようだ。今後、各ベンダーの売り込み合戦が過熱すると予想される。

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<関連リンク>:

「Discovery Studio」製品情報ページ
http://accelrys.co.jp/products/discovery-studio/qsar-admet-and-predictive-toxicology.html

「ADMEWORKS」製品情報ページ
http://jp.fujitsu.com/group/kyushu/services/lifescience/admeworks/index.html

「Derek Nexus」製品情報ページ
http://www.ctcls.co.jp/products/lhasa/derek_nexus.html

「Model Applier」製品情報ページ
http://www.ctcls.co.jp/products/leadscope/leadscope_model_applier_gts.html

「SYMMETRY」製品情報ページ
http://www.rsi.co.jp/kagaku/cs/prous/index.html

「CASE Ultra」製品情報ページ
http://infocom-science.jp/product/detail/multicasesoftwareandmodules.html

「StarDrop」製品情報ページ
http://www.hulinks.co.jp/software/stardrop/module_dereknexus.html

「Percepta」製品情報ページ
http://jp.fujitsu.com/solutions/hpc/app/acd/products/v2014-percepta.html

「ADMET Predictor」製品情報ページ
http://www.northernsc.co.jp/ADMETPredictor.php

「HazardExpert」製品情報ページ
http://infocom-science.jp/product/detail/hazardexpert.html


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