モルシスが最新版「MOE 2018.01」をリリース

バイオ医薬品研究向け機能を強化、新型立体視ディスプレイもサポート

 2018.02.17−モルシスは、加CCG社が開発している統合計算化学システム「MOE」の最新バージョンである「MOE 2018.01」をこのほど提供開始した。核酸医薬品や抗体医薬品の開発に利用できる新機能が搭載されており、タンパク質−タンパク質ドッキング機能を用いて抗原と抗体のより確からしい結合様式を探るエピトープマッピング機能を実現したほか、核酸のためのモデリング機能、核酸のドッキングシミュレーション、核酸のアラインメント・重ね合わせ、核酸の物性推算機能なども強化されている。また、新しいバーチャルリアリティー(VR)型ディスプレイとして注目されている「zSpace」(米zSpace社製)に対応し、分子モデルを直感的に操作できるようになった。

 MOEは、創薬・生命科学研究のための統合ソフトで、低分子、タンパク質、核酸、糖鎖、それらの複合体などさまざまな分子系をサポートしており、各種の設計・解析手法を幅広く適用することができる。開発環境は“SVL”(サイエンティフィックベクターランゲージ)としてオープン化されており、この言語に習熟していればプログラムの改良や機能追加などをユーザー自身が行うことができる。SVLプログラム集の公開・交換も行われており、モルシス自身も自社開発したプログラムをユーザーに無償で提供している。

 さて、今回のMOE 2018.01は、ここ数年の方向性を継いで、バイオ医薬品研究向けの機能が強化された。とくに目玉になるのが、抗原の抗体結合部位(エピトープ)を予測するエピトープマッピング機能。まずタンパク質ドッキングを行い、タンパク質−タンパク質間相互作用(PPI)フィンガープリントを計算。それをもとにクラスタリングを実施し、クラスター内でPPIに多くかかわるアミノ酸残基をクラスターごとにエピトープとして予測している。また、この機能をPPI界面の特定にも使用することが可能。専用の解析パネルを使って、エピトープの3次元構造を強調した表示や、対応する配列を色づけしてわかりやすく示すことができる。

 次に、核酸モデリング機能では、DNA/RNAの一本鎖、二本鎖の構築、伸長、修正など、タンパク質ビルダーと同様の機能が追加された。そのほかに、分子鎖の結合や分離、塩基の再配置とエネルギー極小化計算、塩基の回転異性体の探索、別の塩基への突然変異も可能。非天然の塩基もサポートしている。

 また、主要なタンパク質ファミリーを網羅したMOEプロジェクトデータベースに、T細胞受容体(TCR)−主要組織適合複合体(MHC)のX線構造を含むデータベースが新たに追加された。専用の検索ツールを用いて、抗原ペプチド/TCR/MHCの配列類似性/相同性、立体構造の条件を組み合わせて高度な検索を行うことができる。MOEプロジェクトデータベースは、タンパク質ファミリーごとに構造・配列・実験データなどを一つにまとめたもので、SBDD研究の強力なツールになるという。

 さらに、低分子関連では、トーションアナリシス機能も注目される。これは、特定の結合のねじれ角を段階的に回転させたときのエネルギープロファイルを解析する機能。配座の柔軟性の評価、回転障壁の推定、好ましい二面角の特定などに利用することができる。回転異性体のエネルギー評価やエネルギー極小化には、精度や速度に合わせて、分子力場計算や量子化学計算を適用できることが特徴となっている。

 MOE 2018.01ではこれらのほかにも、外部の分子動力学エンジンとしてAMBERをサポート、振動円二色性(VCD)スペクトル解析機能の強化、MMP(マッチドモレキュラーペア)解析のためのMOEsaicの機能強化、グラフィック関連機能の強化などが実施されている。

 最後に取り上げたいのは、VRディスプレイ「zSpace」のサポートである。MOEはこれまでも立体視に積極的に取り組んできており、過去にも液晶シャッター方式の3Dディスプレイや、赤青メガネ方式、裸眼立体視などに対応してきた。今回の「zSpace」(国内代理店は富士通)は、専用のディスプレイとメガネを使用するもので、利用者の頭の位置を追跡する機能があるため、原子や分子表面などのグラフィックスを、実際に目の前に存在するかのように見回すことが可能。また、スタイラスと呼ばれるペン型のコントローラーを使用し、3次元オブジェクトを自由に操作することができる。

















******

<関連リンク>:

モルシス(トップページ)
https://www.molsis.co.jp/

zSpace(日本法人のトップページ)
http://jp.zspace.com/

富士通(VRソリューションのページ)
http://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/vr-solution/


ニュースファイルのトップに戻る