Appierが創造的に行動するAIを解説
コンテンツ制作と解決策の探索、定量可能なゴール設定がカギ
2019.05.23−AI(人工知能)テクノロジー企業のAppier(エイピア)は22日、「AI」の創造性は人間を超えるのか? Creative in AI の最前線」という主題で報道関係者向けセミナーを開催した。同社のチーフAIサイエンティストであるミン・スン(Min Sun)氏は「(最近の研究の進歩により)AIが創造的に振る舞うことは可能になった」とし、研究事例などを紹介した。
同社は、2012年に台湾で設立した企業で、日本を含めアジア12ヵ国に14のオフィスを構えている。AIを応用したデジタルマーケティングの世界的なリーダーとされており、見込み客を特定するためのクロスデバイス広告配信ソリューション「CrossX」、行動傾向や興味などで類似性のある客層をセグメント化する「Gillnet」、セグメント化された顧客にプッシュ型の広告配信を行うプラットホーム「AIQUA」、顧客データのインテリジェンスを獲得するためのデータサイエンスプラットホーム「AIXON」といった製品を提供している。
さて、スン氏は、AIは人間のような創造性を持つことはできていないが、「創造的な行動をすることはできる」とし、そのことを“コンテンツ作成”と“解決策の探索”の二つに分けて説明した。まず、コンテンツ作成だが、AIは人間のコンテンツ制作プロセスをまねているため、優れたお手本を人間が与えることが重要だという。例えば、文章の生成では、初期(2015年)の研究では写真からその説明文を生成したが、それは「少女がケーキを食べている」といった事実だけの写真説明に過ぎなかった。しかし、2019年の研究では、おとぎ話の例文を大量に学習させた結果、1枚の写真から物語風の文章をつくり出すまでになっているという。視点や文体を変えて文章を綴ることも可能。
一方、2017年の研究で、アートの創作に挑んだ事例もある。もとになる素材の画像とアートスタイルを与えると、それらを合体させて新しい画像を生み出すというもの。同様の手法で音楽やダンスなどの表現も可能で、「AIが創造的にみえる振る舞いをしている」という。
創造的なAIのもう一つの側面は、解決策を探索すること。AIは、大規模な探索空間の中からより良い解決策を探し出すことが得意で、人間が実験や試行錯誤で長大な時間をかける問題について、AIは瞬時に答えを出してしまう。ただし、スン氏は、この時に定量可能で明確なゴールを人間がきちんと与えてやる必要があると指摘する。例えば、ニューラルネットワークの開発は、深層学習の専門家にしかできない非常に時間のかかる作業だったが、強化学習を使ったニューラルアーキテクチャーサーチ(NAS、2017年)、最適解ニューラルアーキテクチャーにおけるデバイス対応プログレッシブ検索(DPP-Net、2018年)など、AI自身によって最適なニューラルネットワークが短時間に開発できるようになってきている。しかも、正確性・推論時間・記憶帯域など複数の目的を同時に満たすことも容易だという。
スン氏は、最適解の探索という分野は、新薬開発や材料探索の用途でも適用が期待できると述べた。「有効な治療薬であるための条件など、何が必要かのゴールを明確に与えることができれば、(AIが最適なアルゴリズムを考えてくれるので)解決策を探すのは人間よりも格段に速い。探索空間を定義し、定量か可能なゴールを設定する上で、科学者・人間の関与が重要である」とした。
また、スン氏は、注目すべき三つのAIトレンドとして、今回の創造的AIのほかに、説明できるAI、人間中心のAIをあげた。このうち、説明できるAIについては、「深層学習の分野でホットなトピックスだ。というのも、深層学習は他の機械学習よりも複雑で、AIが何をしているのかがブラックボックスになってしまう。とくに、医療上の診断、新薬の開発、金融リスクアセスメントなどの用途では、ブラックボックスから出てきた答えを納得して受け入れることは難しい。そこで、これらの分野で説明できるAIの研究が進んでいる」と解説した。
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