ダッソー・システムズが結合自由エネルギー計算を高速化

商用ソフト初のMSLD搭載、複数リガンドを一度に評価

 2020.08.21−ダッソー・システムズが開発している生命化学向け分子モデリング&シミュレーションシステム「BIOVIA Discovery Studio」(DS)の最新バージョン2020に搭載されたMSLD機能(Multi-Site Lambda Dynamics)が注目を集めている。新薬候補化合物のリードオプティマイゼーションの段階で、構造の変化にともなう結合自由エネルギーを高速に計算することが可能。商用ソフトとして初めて実装したもので、既存の手法よりも2ケタ速く評価できるという。

 リードオプティマイゼーションでは、化合物の置換基などを入れ替えて、受容体との結合自由エネルギーを評価しながら、活性の高い構造を探索することが行われる。高速な分子動力学計算によって実験と同等の精度でこれを予測することができ、すでに米シュレーディンガーがGPU対応MDソフト「Desmond」を使用したFEP(Free Energy Perturbation)法に基づく「FEP+」で実績をあげている。最近では、米カリフォルニア大学で開発されているMDソフト「Amber」も、Thermodynamic Integration(TI)法をサポートして、結合自由エネルギー計算のニーズに対応している。

 今回の「DS 2020」に搭載されたMSLD機能は、対応しているMDソフトの1つである「CHARMm」を利用したもの。計算速度が速いことに加え、複雑な設定をGUIで行うことができ、部分構造を変化させたライブラリー全体を一度で解析できるという簡便さが特徴となっている。

 例えば、リード化合物の構造に対し、置換基を入れ替える位置を3ヵ所設定し、それぞれに置換基を5種類ずつ用意するなどの条件で解析することが可能。まず、単分子と、受容体との結合状態(複合体)とで溶媒中の状態を計算し、その後にバイアスの最適化操作を行う。この部分の処理に時間がかかるため、GPUを利用(Linux環境のみ)して高速化することが可能。そして、MSLDの本計算を実行するが、20ナノ秒のMDシミュレーションを3回行って平均値を算出するなどして、最終的な相対的結合自由エネルギーを求める。

 同社によるベンチマークの結果、FEP法と遜色ない精度(誤差1Kcal/mol)が出ており、一度のシミュレーションでリガンドと受容体のすべてのペアを解析できるため、FEP法よりも最大で20倍程度高速に評価することができるとしている。

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<関連リンク>:

ダッソー・システムズ(BIOVIA 日本語トップページ)
https://www.3dsbiovia.jp/

ダッソー・システムズ(BIOVIA Discovery Studio 製品紹介ページ)
https://www.3dsbiovia.jp/products/collaborative-science/biovia-discovery-studio/


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