東京大学が量子コンピューターの社会実装目指す協議会
産業界と共同でイニシアティブ、IBM Qの実機活用
2020.07.31−東京大学は30日、量子コンピューターの社会実装目指す「量子イノベーションイニシアティブ協議会」(QII協議会)を設立したと発表した。アカデミックサイドの慶應義塾のほか、民間企業9社が設立メンバーとして加わっており、実際に産業界で活用できる量子コンピューター用のアルゴリズム開発、アプリケーション開発に向け、共同研究を進めていく。大学・研究機関、企業の新規メンバー募集も行う。
QII協議会は、みずほフィナンシャルグループの佐藤康博会長が協議会会長に就任、東京大学大学院理学系研究科の相原博昭教授がプロジェクトリーダーを務める。発足時のメンバーは、慶應義塾、JSR、DIC、東芝、トヨタ自動車、日本アイ・ビー・エム、日立製作所、みずほフィナンシャルグループ、三菱ケミカル、三菱UFJフィナンシャル・グループ。事務局は東京大学に置かれる。
東京大学と米IBMは昨年12月に「Japan-IBM Quantum Partnership」として、量子コンピューティング技術の実用化で提携。慶應義塾大学は2018年5月に「IBM Q Network Hub」を開設し、IBMの量子コンピューター「Qシステム」をクラウド経由で利用し、金融、化学、人工知能(AI)などの分野で研究を進めてきた。こうしたスキームのもと、今年、2台の「Qシステム」が日本に設置される予定であり、「いま使える技術を使って、早期に社会実装を図る」という考え方から、産業界のニーズを反映させたアルゴリズムやアプリケーション開発をターゲットに、まずはIBMのマシンをベースに実用化を目指す方針になったようだ。他の方式、他機種の量子コンピューターを排除するものではないという。
会見に出席したJSRの小柴満信会長は、「特殊化路線で生き残りを図る日本の製造業にとって、研究開発のスピードアップは生命線。量子コンピューターが実用化されればいまの10〜100倍のペースで研究が進むと期待される。また、誤り訂正機能がない量子コンピューターの活用にここ数年取り組んできたが、使用するにはかなりのノウハウが必要なことがわかってきた。量子化学計算を本格的に行うのは20〜30年後になるかもしれないが、いまのうちから先駆けてノウハウを身につけておけば、先々には大きなアドバンテージになる」との見方を示した。
金融の世界でも、トレーディングビジネスにおいては高度なアルゴリズムと計算速度がカギになる。また、金融資産を保護する暗号化技術の観点でも、量子コンピューターに取り組む意義が大きいという。
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<関連リンク>:
東京大学(量子イニシアティブ登録プロジェクトのページ)
https://www.u-tokyo.ac.jp/adm/fsi/ja/projects/quantum/