アドバンスソフトが汎用型GNN力場を利用できる初のGUIソフト
Advance/NanoLabo最新版でサポート、LAMMPSでMD計算
2022.02.08−アドバンスソフトは、ナノ材料解析統合システム「Advance/NanoLabo」を機能強化し、商用ソフトとして初めて汎用型グラフニューラルネットワーク力場(汎用型GNN力場)をサポートし、提供を開始した。これは、Facebook AI Researchとカーネギーメロン大学が主催するOpen Catalyst Projectで開発され、昨年12月に公開されたばかりの技術で、もともとのターゲットである触媒系だけでなく、結晶・表面系・有機分子などに幅広く対応できる汎用的な力場となっている。「Advance/NanoLabo」のGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)機能を使って、分子動力学(MD)エンジンのLAMMPSで簡単に使用することができる。
「Advance/NanoLabo」は、モデリング、計算実行、計算結果の可視化を統合したGUIシステム。マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を意識した計算化学システムで、無機結晶系のMaterials Project、分子系のPubChemといった公開データベースに簡単に接続し、取り込んだモデルを加工して、第一原理計算のAdvance/PHASEやQuantumESPRESSO、分子動力学計算のLAMMPSで解析することができる。企業または大学関係の利用者が急速に増加しており、同社では昨年10月にバージョン2.2、12月に2.3、今年2月に今回の2.4と、矢継ぎ早のバージョンアップでユーザーの期待に応えている。
さて、MD計算で使用する力場は、計算対象とする系に適したものを使用する必要があり、パラメーターが不足している材料分野ではあらためてユーザーが作成しなければならない場合も多かった。しかし、今回の汎用型GNN力場は、結晶と分子の両方を共通の力場で扱うことができるため、無機材料と有機分子の界面など、さまざまな問題への対応が容易。Facebookが所有するスーパーコンピューターを使用し、約1億3,000万の第一原理計算(VASPによるものとされる)を実行、その計算結果を教師データに利用して機械学習により力場を作成した。昨年12月にプロジェクトのホームページで公開されたが、これを商用ソフトのGUI環境で利用できるのは、「Advance/NanoLabo」が初めてだという。
使い方は簡単で、「Advance/NanoLabo」のGUIで計算エンジンのLAMMPSを選択し、汎用型GNN力場を呼び出すだけ。力場の種別は、GemNetやDimeNet++など5種類を選択することができる。力場はPythonで実装されているため、MD計算環境としてMPI並列を使用することはできないが、GPU(グラフィックプロセッサー)には対応している。汎用型GNN力場を試してみたいというユーザーからの問い合わせはすでにかなりあるようだ。
また、同社では、自分で機械学習を行ってニューラルネットワーク力場を作成する専用ソフト「Advance/NeuralMD」も販売中で、今回同時に最新バージョン1.5をリリースした。通常は、機械学習のためにQuantumESPRESSOで計算した教師データを数千件用意する必要があるが、汎用型GNN力場によるMD計算結果(第一原理計算の計算精度を反映している)を併用すれば、少ない計算コストで効率良く学習を行うことが可能。「Advance/NanoLabo」と「Advance/NeuralMD」を組み合わせた活用方法も注目される。
ソフト価格は、それぞれ年間ライセンスが50万円、買い取りライセンスは150万円。アカデミックライセンスはその半額になる。QuantumESPRESSOやLAMMPSはオープンソースソフトであり、無償で利用可能(有償サポートも用意)。今回の汎用型GNN力場も、追加費用等は発生しない。
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<関連リンク>:
アドバンスソフト(トップページ)
https://www.advancesoft.jp/
アドバンスソフト(Advance/NanoLabo 製品情報ページ)
https://www.advancesoft.jp/product/advance_nanolabo/
アドバンスソフト(Advance/NeuralMD 製品情報ページ)
https://www.advancesoft.jp/product/advance_neuralmd/
Open Catalyst Project(トップページ)
https://opencatalystproject.org/