分子機能研究所が大学との共同研究を推進

がん治療薬など、受託事業へも弾み

 2023.11.07−分子機能研究所は、独自の構造ベース創薬(SBDD)技術を利用し、大学との共同研究で成果をあげている。研究プロジェクトのうち、インシリコ創薬を実施するパートを担当しているもので、がん治療薬の開発をターゲットに、大阪大学産業科学研究所および京都府立医科大学創薬センターと、それぞれ共同研究を開始している。これらアカデミックでの実績をテコに、民間向けに提供している「MFDDインシリコ創薬受託研究サービス」をさらに推進していく考えだ。

 同社は設立20年の民間研究機関で、自社開発のプログラムのほか、オープンソースや商用ソフトを組み合わせてインシリコ創薬支援システムを構築し、研究やサービスに活用している。MFDDでは、構造未決定の膜貫通タンパク質を標的としたインシリコスクリーニングを実施し、有効成分を発見することに成功したことで、追加のロイヤリティ収入を得るなどの実績も出ているという。

 さて、今回の共同研究パートナーである大阪大学産業科学研究所複合分子科学研究分野・鈴木研究室(鈴木孝禎教授)は有機化学を基盤として意図した薬効を発現する有機化合物の創製に取り組んでいる。主に、(1)次世代エピジェネティックドラッグを目指したアイソザイム選択的ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤やヒストン脱メチル化酵素阻害剤など、エピジェネティクス制御化合物の創薬研究、(2)クリックケミストリーを用いた低分子化合物ライブラリーの構築と新規生理活性物質の探索研究、(3)標的となる酵素が引き起こす触媒反応、あるいはその酵素特有のポケットを使って、酵素自身に阻害薬を合成させる標的酵素誘導型合成(TGS)を用いた酵素の特異的な阻害薬の創製研究−をテーマにしている。

 一方の京都府立医科大学創薬センター・酒井研究室(酒井敏行センター長)では、がん分子標的薬スクリーニング系「RB再活性化スクリーニング」法を創案し、MEK阻害剤トラメチニブを発見している。2013年5月にファーストインクラスのMEK阻害剤として米国FDAに承認されたのち、2022年にBRAF阻害剤ダブラフェニブとトラメチニブとの併用療法が、進行性BRAF変異メラノーマ患者ほか、多臓器のBRAF変異がんに有効だとしてFDAの承認を得ている。

 今回、分子機能研究所が関与する研究テーマについては、進行中の研究であるため詳細は明らかにされていない。ただ、同社は昨年、東京大学医学部との共同研究の結果、インシリコスクリーニングで活性化合物を複数見つけるという成果を得ており、実際に合成後、薬効データを加えて論文化の作業が進められている。今回の2大学との共同研究も、有意義な結果が出れば、論文などのかたちで明らかにされる可能性はあるだろう。

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https://www.molfunction.com/jp/


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