NTTの秘密計算技術がISO国際標準に採択

秘密分散技術で高速処理、具体的アルゴリズムの実装可能に

 2024.03.23−NTTは21日、データを暗号化したまま元に戻さずに処理をする“秘密計算技術”について、同社が開発した技術が国際標準化機構(ISO)に採用、採択されたと発表した。秘密計算技術のうち、“秘密分散”と呼ばれる方式を規定したもの。今回、具体的なアルゴリズムが定められたことにより、実際のISO標準に基づく秘密計算が実装できるようになった。今後、すでにいくつかの実績がある実証実験をさらに拡大させるほか、さらに研究開発を進め、社会実装の推進に取り組んでいくとしている。

 秘密計算には、秘密分散、準同型暗号、完全準同型暗号、Garbled circuitなどの方式があるが、データを暗号化したまま扱うため通常よりも処理に時間がかかるのが課題。NTTは最も高速である秘密分散に着目して、秘密計算技術の研究開発や標準化活動に力を入れてきており、秘密分散技術の規格化をはじめ、秘密計算の初のISO規格である「ISO/IEC 4922-1:2023」の発行など、ISO/IECにて文案の取りまとめ等の活動を通して規格作成を主導してきたという。

 「4922-1」は秘密計算に関する総論、枠組みを定めたもので、具体的な方式までは含めていなかったが、今回の「ISO/IEC 4922-2:2024」(3月6日発行)では、とくに“秘密分散”の基礎的な演算方式が具体的なメカニズム(アルゴリズム)として規定されている。データを暗号化したままでの加算・減算・乗算およびそれらに補助的な役割を果たす乱数生成からなっているが、ポイントは乗算。秘密分散による秘密計算は、複数(数学的に3台以上が必要)のサーバーにデータを分散して保存することで暗号化を保つ仕組みであり、乗算は通信をともなうためボトルネックになりやすい。ここに採用されたのがNTT方式であり、近年の実用的なケースからサーバー台数や秘密分散方式を限定したことで、統計分析や人工知能(AI)モデルの作成などの処理を最も高速に行うことができる。

 NTTグループでは、病院、大学などと実証実験を推進しているほか、NTTコミュニケーションズがクラウド上で秘密計算を利用できるサービス「析秘(せきひ)」を2021年から提供中。また、プライバシー保護技術(PETs)がOECDやG7などでも注目されていることから、安心安全なデータ流通の国際的なルールづくりも視野に、秘密計算技術での貢献を目指して幅広い取り組みを行っていく考えだ。

******

<関連リンク>:

NTT(研究開発のページ)
https://www.rd.ntt/sil/project/sc/secure_computation.html

NTTコミュニケーションズ(秘密計算サービス「析秘」紹介ページ)
https://www.ntt.com/business/services/secihi.html


ニュースファイルのトップに戻る