総論1:2008年のCCS業界動向
総論2:電子実験ノート
主要ベンダー各社の製品戦略
アフィニティサイエンス、コンフレックス、サイバネットシステム、富士通九州システムエンジニアリング、ヒューリンクス、インフォコム、科学技術振興機構、エルエイシステムズ、菱化システム、シミックス・テクノロジーズ・ジャパン、ウェイブファンクション(アルファベット順)
- シミックスが国内で初のシンポジウム開催、Isentrisへの移行環境整う
2008.10.15−シミックス・テクノロジーズは、9月9日から11日まで京都にて、MDLとの合併後に国内では初めてとなる「シミックスシンポジウム」を開催した。前年まで行われていた旧MDLのユーザー会と旧シミックスのユーザー会を吸収し発展させたもので、ユーザー会としての性格は薄れ、シミックス側からのプレゼンテーション中心の内容に変わった。ただ、会の中では今後の運営方針に関するユーザー側の率直な意見も集められ、シミックスからは次回に向けて要望を反映したいとの意向が表明された。新生シミックスの事業は、“ソフトウエア”、“ツールズ”、“リサーチ”の3分野から構成されるが、その全体像および各事業の戦略・ロードマップが明らかにされた。
- 菱化システムが密度汎関数法ソフトの最新版「ADF2008」を発売
2008.10.21−菱化システムは、蘭サイエンティフィックコンピューティング&モデリング社(SCM)が開発した密度汎関数法プログラム「ADF」の最新バージョンである「ADF2008」の販売を開始した。量子化学計算を行うソフトで、均一系・不均一系触媒から無機化学、重元素化学、生化学、各種スペクトル関連まで幅広い分野の研究に利用することが可能。今回の最新版では、基本となる計算機能の強化に加えて、高速な半経験的方法であるDFTB(デンシティファンクショナル・タイトバインディング)の組み込み、化学工学分野の熱力学物性予測を行う「COSMO-RS」の追加などが行われている。
- エルゼビアの書誌データベースScopusをOECDが採用、各国政府が活用
2008.10.22−科学・技術・医学分野の情報サービスプロバイダーであるエルゼビアは、学術ナビゲーションサービス「Scopus」(スコーパス)がOECD(経済協力開発機構)に採用されたと発表した。世界的な研究動向の調査や加盟国の研究活動を定量的に把握することなどにより、科学技術政策の決定などに関連した基盤情報の提供に役立てるという。
- トムソン・ロイターがレギュラトリーサイエンス戦略を強化、高い専門性
2008.10.28−トムソン・ロイターは、製薬企業向け情報サービスの一環として、新薬の承認にいたる時間の遅れを解消する意味で注目されている“レギュラトリーサイエンス”に関連した戦略を強化する方針を打ち出した。世界最大級の科学技術情報ソリューションプロバイダーとしての高度な専門性を生かし、複数のサービスを組み合わせて多様なニーズに柔軟かつ包括的に応えられるようにしていく。
- 米オープンアイが日本法人を設立し対日戦略を強化、米国から直販へ
2008.10.29−創薬研究支援の専門ソフトウエアベンダーである米オープンアイ・サイエンティフィックソフトウエア(本社・ニューメキシコ州、アンソニー・ニコルズ社長兼CEO)は、このほど日本法人「オープンアイ・ジャパン」を設立し、対日戦略を強化した。販売代理店を主体としてきたビジネスモデルを大きく方向転換し、日本法人の支援のもとに米国からの直接販売・直接サポートに切り替える。同社は商業的な面よりも“サイエンス”を重視することをポリシーとしており、今回の変化は日本の科学者・技術者と直接に対話したいとの考えからだという。
- サイバネットシステムが加シムバイオシスの創薬支援ツール発売
2008.10.30−サイバネットシステムは、加シミュレーテッドバイオモレキュラーシステムズ(略称・SimBioSys=シムバイオシス、ピーター・ジョンソン会長)と国内における販売代理店契約を締結し、創薬支援のためのソフトウエア製品群の販売を開始した。標的たん白質と薬物候補化合物とのドッキングシミュレーション、たん白質の立体構造に基づいて薬物分子構造を創出するde Novo(デノボ)デザイン、知識ベースに基づく合成経路設計など、ユニークなソフトが揃っている。同社のコンピューターケミストリーシステム(CCS)事業の主力製品に位置づけて拡販を図る。
- 米シミックス・テクノロジーズ:ゴールドワッサーCEOインタビュー
2008.10.31−シミックス・テクノロジーズがMDLインフォメーションシステムズを買収して、ちょうど1年になる。それぞれの日本法人同士も統合し、新生シミックスはまさに順調に滑り出した。3つの事業がバランスを取る新生シミックスの全体像も明確になってきており、買収・合併の真価が問われるという意味で、2年目の舵とりが注目されるところ。同社のイジー・ゴールドワッサー(Isy Goldwasser)CEOに、ビジネスの現状と今後の戦略を聞いた。
- 米シミュレーションズプラス:ウォルトスCEOインタビュー、ソフト主導が定着
2008.11.05−米シミュレーションズプラスは、生体内における医薬品の吸収など、薬物動態研究や製剤設計に役立つ“インシリコ創薬”のための支援ソフトウエアを開発。その予測精度には定評があり、米食品医薬品局(FDA)や米国立衛生研究所(NIH)も同社のソフトを利用している。とくに、化学物質の毒性予測は幅広く注目を集めており、製薬業だけでなく最近では化学・食品産業にもユーザーが広がっているという。同社のウォルター・ウォルトス(Walter S. Woltosz)会長兼社長兼CEOは、「かつて、医薬のR&Dは実験がすべての世界だったが、いまや実験の前にシミュレーションを行うスタイルが完全に定着した。日本でも同じ変化が生じている」と話す。
- トムソン・ロイター:ブラウン上級副社長インタビュー、特許調査の“新標準”
2008.11.20−トムソン・ロイターのサイエンティフィック部門は、知的財産情報統合ソリューション「Thomson Innovation」(トムソンイノベーション)の日本語インターフェース版を11月4日から正式に提供開始した。特許を中心とした複合的なコンテンツを豊富に関連付けており、その網羅性と正確性によって企業の知的財産戦略推進を強力に支援することができる。「特許調査の新しいスタンダードになる」と自信をみせるデービット・ブラウン上級副社長(David Brown)にサービスの特徴を聞いた。
- 東大・合原教授らが数学モデルを利用して前立腺がん療法、動的に投薬
2008.12.17−東京大学生産技術研究所は16日、合原一幸教授らのグループが数学モデルに基づいた合理的な前立腺がん療法を開発したと発表した。前立腺がんの進行をはかる指標である前立腺特異抗原(PSA)の計測データを利用し、患者パーソナルの数学モデルを作成することにより、テーラーメードで効果的な治療を実施することができる。共同研究先であるバンクーバー総合病院の臨床データで有効性を確認しているが、合原教授らは今後国内でも臨床への応用を進めたいとしている。
- CTCLSが次世代シーケンサー対応のデータ解析ソリューション
2008.12.18−CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、このほど独ジェノマティクス(本社・ミュンヘン、トーマス・ワーナー社長)が開発した次世代シーケンサー向けデータ解析システム「Genomatix Mapping Station」(マッピングステーション)および「Genomatix Genome Analyzer」(ゲノムアナライザー)の販売を開始した。次世代シーケンサーが出力する大量のデータをストレスなく解析できる業界初のシステムで、フリーのツールなどを組み合わせた現在の解析手法に比べ、数十倍から数百倍の時間短縮を可能にするという。この分野の標準ツールとなることを目指し、CTCLSでは3年後に5億円の販売を見込んでいる。
- CASレジストリーのデータ収録件数が1億件を突破、アズレノベンゾフラン
2008.12.20−化学情報協会(JAICI)は、米国化学会(ACS)の情報部門であるケミカルアブストラクツサービス(CAS)の化学物質データベース「CAS REGISTRY」(CASレジストリー)に4,000万件目の物質が登録され、たん白質や核酸の配列情報と合わせてデータ収録件数が1億件を突破したと発表した。今回登録されたのはアズレノベンゾフラン誘導体で、医薬品の合成方法を改良する可能性を持つユニークな化合物だという。
- FQSがADMEデータベースの最新バージョン13、プロドラッグ関連代謝酵素
2008.12.27−富士通九州システムエンジニアリング(FQS)は26日、ADME(吸収・分布・代謝・排出)関連のデータベース(DB)サービスを更新し、来年1月5日からバージョン13として提供開始すると発表した。インターネット経由で利用できるASP(アプリケーションサービスプロバイダー)形式のサービスで、今回はプロドラッグの代謝活性化過程で主要な役割を担っている代謝酵素の薬物動態に関連するデータが新規に追加された。利用料金は年間契約で、企業および国立研究機関向けの全DBパックが157万5,000円、同じく教育機関向けは52万5,000円。1年間に30契約を販売目標としている。
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- マイクロソフトがWindowsHPCサーバー2008日本語版を正式リリース
2008.10.03−マイクロソフトは2日、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)のために強化したサーバーOSの最新版「WindowsHPCサーバー2008」日本語版を提供開始したと発表した。多数のPCクラスターを束ねて科学技術計算などのシミュレーションを高速に実行させるためのシステムで、HPC利用の生産性を高めるとともに、既存のIT環境との統合などを通して運用管理を容易にし、HPC自体を一般市場へと普及させることを狙っている。このため、金融分野での採用も見込んでおり、とくに伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と特別に連携して市場開拓を目指すとしている。
- NECがプロセス業向けERPを機能強化、源流からの品質管理実現
2008.10.07−NECは6日、食品・化学などのプロセス産業向けERP(エンタープライズリソースプランニング)パッケージ「FlexProcess」(フレックスプロセス)を機能強化し、原料や工程も含めた品質管理を可能にする新モジュールを製品化し販売開始したと発表した。安全・安心に対する消費者の意識が高まるなか、得意先への品質開示や問題発生時のクレーム原因・影響追跡の迅速化をシステムとして実現することができる。ERPと連動しているので生産現場だけにとどまらず、経営の観点で“みえる化”できることが特徴。今後3年間で50社への導入を目指す。
- アスペンテックジャパンがaspenONEバージョン7、7つのベストプラクティス
2008.10.16−プロセス産業専門IT(情報技術)ベンダーのアスペンテックジャパンは、変化の激しい市場環境に対応し、生産現場と経営を情報でつないで戦略的な意思決定を迅速に下せるようにする統合ソリューションスイート「aspenONE」の最新バージョン7を国内でリリースした。欧米の先進企業で実証済みの7つのベストプラクティスを盛り込んでおり、効率的な業務改革を実現することができる。とくに、今回のバージョン7ではプラントの設計やエンジニアリング、運転最適化など、“ものづくり”技術の高度化に役立つことが特徴となっている。
- レッドハットがHPC専用のLinuxパッケージを製品化、1時間以内に導入
2008.10.16−レッドハットは16日、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)に必要なソフトウエアを組み合わせたオールインワンパッケージ「RedHat HPCソリューション」を提供開始すると発表した。HPCのシステムを簡単に短時間で導入できるのが特徴で、政府機関などが行う大規模な科学技術計算分野に加えて、民間の金融や製造業、バイオテクノロジー関連などへ適用分野を広げていく。現在のHPC環境はLinuxがメインになっているが、必要なソフトをユーザーが自分で集めて組み合わせるのが通例であり、最初からパッケージ化されるのはLinux業界で初めてだという。
- BASFがアスペンテック製品導入展開でMSの仮想化技術を本格採用
2008.11.08−アスペンテクノロジー(アスペンテック)は、独BASFがマイクロソフトの仮想化技術を全面的に採用し、化学工学ソフトウエアの全社導入展開を成功させたと発表した。導入期間が半減したことに加え、長期のプロジェクトのために古いファイルや以前のバージョンのソフトも併用したいという現場のニーズに応えることが可能になった。アスペンテックは9月にリリースした「aspenONEバージョン7」で仮想化技術に本格対応、マイクロソフトも10月に仮想化製品をバージョンアップしたばかり。今回の事例をテコに、日本企業に対しても仮想化戦略を積極的に推進していく。
- フィックスターズが米テラソフトを買収、Cell/B.E.向けLinux事業継承
2008.11.13−フィックスターズ(本社・東京都港区、三木聡社長)は11日、Linuxディストリビューションの1つである“Yellow Dog Linux”を製品化している米テラソフトソリューションズ(本社・コロラド州、カイ・スタッツCEO)の全資産を買収したと発表した。新たに米国に設立した100%子会社「フィックスターズソリューションズ」(カリフォルニア州)のもとで従業員を含めた全事業を引き継ぐ。これにより、Cell Broadband Engine(Cell/B.E.)の組み込み用途へのビジネス展開を強化していく。
- マイクロソフトがファスト社買収で企業向け検索ソリューションを強化
2008.11.14−マイクロソフトは12日、ノルウェーのファストサーチ&トランスファを今年の4月に買収したことを受けての日本国内での事業体制について記者説明会を開催した。ファスト社はマイクロソフトの1部門となるが、日本法人は引き続きそれぞれの製品およびサービスを提供しつつ、必要に応じて協力体制を取るかたちになる。両社の統合により、企業内の情報検索のニーズに対して、ローエンドからハイエンドまでの包括的なソリューション提供が可能になった。
- 東工大がTSUBAME1.2で初の大規模GPU搭載型スパコンを実現
2008.12.11−東京工業大学は、実効性能で国内の第2位、世界では29位にランクされるスーパーコンピューターシステム「TSUBAME」を、このほど報道関係者に披露した。11月に世界で初めて本格的にGPU(グラフィックプロセッサー)を中心とした演算装置の増設を行い、「TSUBAME1.2」に強化したことを受けたもの。流体シミュレーションなどで100倍以上の高速化を達成した。責任者の松岡聡教授(学術国際情報センター研究基盤部門)は、「ムーアの法則に従うCPUの速度向上は10−15年で100倍だが、GPUを導入すればそれを1年で100倍にできる。いわば、10年後の性能をいま手にすることができる。しかも、同じ性能なら60台のラックが2台になり、消費電力は24分の1。今回のTSUBAME1.2は、スーパーコンピューティングのメインストリームがGPUアクセラレーションに変わる時代への、まさに第一歩を踏み出したものだといえる」と述べた。
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