総論:昨年の市場動向
主要ベンダー各社の戦略:アクセルリス、アドバンスソフト、アドバンスドテクノロジーインスティテュート、ベストシステムズ、ケムインフォナビ、コンフレックス、ケンブリッジソフト、CTCラボラトリーシステムズ、サイバネットシステム、ダイキン工業、Elsevier MDL、富士通九州システムエンジニアリング、富士通、ヒューリンクス、インフォコム、日本電子/日本電子データム、日本総合研究所、科学技術振興機構、分子機能研究所、NEC、物質・材料研究機構、ノーザンサイエンスコンサルティング、プロウスサイエンスジャパン、菱化システム、住商情報システム、サイエンス・テクノロジー・システムズ、トムソンサイエンティフィック、ウェイブファンクション (アルファベット順)
- トムソンサイエンティフィックがジェネリック向けDBサービス
2006.04.24−トムソンサイエンティフィックは、買収・統合したニューポート社が提供していたジェネリック企業向けのデータベース(DB)サービス「HorizonGlobal」を日本市場で本格的に販売開始する。原薬(API)供給者に関する世界中の情報を網羅したDBがもとになっており、インドや中国など日本であまり知られていない地域の企業も多数カバーされていることが特徴。1万2,000社の企業データと1万種の製品データを収録しているが、約700人のコンサルタントが情報を集めており、その正確さ・信頼性には定評がある。
- CTCLSがウェット系サービス事業に力、GVKバイオの受託合成サービス
2006.04.24−CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、インドの医薬品開発受託機関(CRO)であるGVKバイオサイエンス社が提供している受託合成サービスの提供に力を入れる。研究用の少量・スポットでの需要から治験のための大量合成、また商業化に向けてのスケールアップ/プロセス開発まで、化合物の合成に関するあらゆる要望にこたえることができる。CTCLSが国内総代理店として本格的に活動をはじめて約1年だが、すでに医薬・農薬・化学品・化粧品など8社に対する実績がある。
- 九工大の皿井教授とATIがバイオインフォ振興で非営利組織を立ち上げ
2006.04.25−九州工業大学の皿井明倫教授とアドバンスドテクノロジーインスティテュート(ATI、窪田綏社長)が、アジア地域のバイオインフォマティクス研究と教育を促進する目的で非営利組織「アジアバイオインフォマティクスリサーチ&エデュケーションネットワーク」(ABREN)を立ち上げた。5月にインターネットを利用したeラーニング方式で「第1回バーチャルバイオインフォマティクスワークショップ」を開催する。時間的・空間的、さらには費用的な側面からも効率的な試みとして注目される。
- CTCLSが米ザイトスの製薬業向け情報共有基盤ソフトを本格発売
2006.04.27−CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、米ザイトスソフトウエアが開発したセキュアな情報共有基盤ソフト「Xythosエンタープライズドキュメントマネジャー」の販売権を取得し、製薬会社などの医薬品研究開発機関向けに本格的な販売活動を開始した。新薬開発などのプロジェクト単位で、外部研究委託先や医療機関との間でのアクセス制限をかけたファイルのやり取りを簡単に行うことができる。ライセンス価格は250ユーザーで562万5,000円。初年度1億円の売り上げを見込んでいる。
- 国立情報学研究所がNAREGIグリッドミドルウエアのベータ版を公開
2006.05.10−国立情報学研究所(NII)は、「超高速コンピュータ網形成プロジェクト」(NAREGI)で開発したグリッドミドルウエアのベータ版を、きょう10日からオープンソースソフトウエアとして公開・配布する。資源管理ミドルウエアやプログラミング環境、アプリケーション環境、データグリッド環境、ネットワークセキュリティ環境などを構成する各種ツールが含まれており、インターネットを介して自由にダウンロードすることができる。プロジェクトでは、今回のベータ版での利用者からの意見や提案を盛り込みつつ、2007年度に正式版公開を目指してさらに完成度を高めていくことにしている。
- 菱化システムが医薬分子の作用メカニズムを予測するBioEpistemeを発売
2006.05.11−菱化システムは、スペインのプロウスインスティチュートが開発した創薬支援システム「BioEpisteme」(バイオエピステメ)の国内販売権を取得し、本格的な販売活動を開始した。任意の化合物が、医薬品としてどのような作用メカニズムを持つ可能性があるのかを予測することができる世界初の商用ソフトで、判定できる作用メカニズムは全部で260種類以上。新薬開発のバーチャルスクリーニングに応用できるほか、過去に研究した化合物に別の可能性を見いだすことでも役に立つ。システムはウェブベースで使いやすく、使用ライセンスは初年度2,000万円から。大手製薬メーカーを中心に売り込んでいく。
- 文科省RSS21プロジェクトが開発成果20本を公開、地球シミュレータ活用
2006.05.24−東京大学生産技術研究所は23日、2005年度から推進中の文部科学省プロジェクト「革新的シミュレーションソフトウエアの研究開発」(RSS21)の最初の成果物として、6月初旬に20本のソフトを公開すると発表した。これは、扱える問題の大規模さや複雑さ、また産業界での応用を目指す点で世界水準をリードする国産科学技術ソフトウエア群。生命現象を扱う「BioStation」や「M-SphyR」、マルチスケール連成問題を得意とする「CHASE-3PT」、「FrontFlow」、都市の安全シミュレーションを行う「EVE
SAYFA」などが含まれている。産業界における研究開発を支える基盤技術として幅広い普及が期待される。
- ElsevierMDLがFDA申請文書の検索・閲覧サービスPharmaPendium提供
2006.05.26−Elsevier
MDL(エルゼビアMDL)は、米食品医薬品局(FDA)への新薬申請文書を手元のパソコンから検索・閲覧できるようにする新サービス「PharmaPendium」(ファーマペンディアム)を提供開始した。1992年以降に米国で承認されたすべての医薬品情報が収められており、前臨床/臨床/市販後調査の各段階で得られた実験データも収録されている。新薬開発に当たって、既存薬の安全性情報を調べる際に有効に利用できるほか、創薬研究のツールとしても役立つ。利用料金は、5指名ユーザーで年間約200万円。
- 分子機能研究所が論理性重視のSBDDシステム、たん白質活性部位予測
2006.05.27−分子機能研究所(埼玉県三郷市、辻一徳代表)は、標的たん白質(受容体)と医薬分子(リガンド)のドッキングスタディを完全に論理的に行うことができるシステム「PIEFII」を開発した。たん白質側の情報に基づいて薬物設計を行うストラクチャーベースドラッグデザイン(SBDD)の統合ツールとして6月にも製品化する。理論や合理性を重視し、解析の序盤で研究者の主観が入らないようにしたことが最大の特徴。とくに、受容体側の相互作用部位を探索する新手法は特許申請中で、世界でも最高レベルの精度を実現しているという。
- 菱化システムが仏サイエノミクスの材料設計支援システムMAPSを発売
2006.06.02−菱化システムは、仏サイエノミクス社と販売提携し、高分子材料などの設計支援システム「MAPS」を1日から発売した。大学などで開発された最先端の計算プログラムを組み込んで利用できるプラットホームソフトで、量子化学や量子物理計算、分子動力学、メゾスケールシミュレーションなどの幅広いソルバーに対応している。材料設計分野では、計算したい対象や問題のスケールに合わせてソルバーを使い分けるのが一般的。ただ、アカデミックの最新ソフトは理論を詳しく理解していないと使えないなど敷居が高かった。MAPSは、それらをだれにでも駆使できるようにする点で注目される存在になりそう。
- ElsevierMDL日本法人:兵頭喜文新社長インタビュー、パートナー戦略前進
2006.06.07−情報化学技術を中心に創薬支援の統合プラットホームを提供しているのが米ElsevierMDL(エルゼビアMDL)。コンピューターケミストリー分野の最古参のベンダーであり、1996年に100%出資で日本法人を設立している。10周年を迎え、初の日本人社長に就任する予定の兵頭喜文氏に、今後の事業戦略・経営戦略について聞いた。
- 理化学研究所が1ペタFLOPSの分子動力学計算専用機を構築
2006.06.20−理化学研究所は19日、日本SGIおよびインテルの協力を受け、1ペタFLOPS(1秒間に1,000兆回の浮動小数点演算)の性能を持つ分子動力学(MD)計算専用の「MDGRAPE-3システム」を構築したと発表した。約4,800個の独自のMD計算専用LSIを搭載し、大規模なPCクラスターを組み合わせた構成。MD計算専用ではあるが、既存の最高速スーパーコンピューターと比べて3倍の理論ピーク性能を達成している。たん白質のシミュレーションを通じて新薬開発に役立てていくことにしている。
- CTCLSが米ファーサイトの臨床試験支援システム製品群を発売
2006.06.21−CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、米ファーサイト(本社・カリフォルニア州、シャウン・オコナー社長)と代理店契約を締結し、きょう21日から臨床試験支援のためのシステム製品群を発売すると発表した。欧米の大手製薬会社で実績豊富なシステムで、効果的な業務改善を達成できる。ファーサイト製品全体で3年間に4億円の販売を見込んでいる。
- 日本総合研究所がJ-OCTA普及へ新たな取り組み、新サービス提供
2006.06.22−日本総合研究所は、高分子材料開発支援システム「J-OCTA」の普及を加速させるための新戦略として、受託解析と教育・講習サービスを組み合わせた「スターターパック」の提供を開始した。
J-OCTAは文部科学省プロジェクト成果を商用化した先端システムで、一般ユーザーが使いこなすには敷居が高いという問題があった。今回のパックを利用すると、約3ヵ月間のサービス期間を通して基本的な使い方と応用力が身につく。料金は解析テーマによって異なるが約50万円。
- 住商情報システムが中電CTIからたん白質ドッキングソフトの販売権
2006.06.23−住商情報システム(SCS)は、中部電力のIT(情報技術)事業会社である中電シーティーアイ(中電CTI)と提携し、たん白質同士のドッキングシミュレーションを行う「GreenPepper」の販売権を取得した。これに合わせ、SCSは米トライポスの統合コンピューターケミストリーシステム「SYBYL」とのインターフェースを独自に開発。これにより、優れたグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)環境を利用した解析を行うことを可能にした。ソフト価格は年間使用権で100万円。まずは、製薬企業の多いSYBYLユーザーに向けて導入を進めていく。
**************<一般ITニュース>***************
- リアクション・デザインが化学反応解析ソフトCHEMKIN最新バージョン4.1
2006.04.04−リアクション・デザイン・ジャパン(本社・東京都文京区、三森輝夫代表取締役)は、詳細化学反応解析ソフト「CHEMKIN」の最新バージョン4.1を販売開始した。基本機能を一段と高度化させたことに加え、燃焼による粒子の生成や成長・凝集などの特異な現象を精密に解析できる新しいオプションモジュールを提供する。ナノ材料開発や環境関連分野での応用展開が注目され、価格はフルパッケージの年間ライセンスで約200万円。
- マイクロソフトがUMPCを日本市場に提供開始、まずは教育市場向け
2006.04.05−マイクロソフトは4日、ウルトラモバイルPC(UMPC)の日本における事業戦略を発表した。タブレットPCでマーケティングを進めてきた教育市場や企業向け特定用途端末などの分野に対して新たな提案を行っていく。とりわけ、ペン操作やデジタルインクなどの技術が高く評価されている教育市場への展開に力を入れる方針で、小学館や学習研究社などと専門のパートナー関係を結んだ。ハードウエアの第1弾はPBJ(本社・東京都新宿区、高橋正敏社長)から提供されることになり、立命館小学校への導入が決まっている。
- 企業向け検索市場が本格化へ、オラクルとグーグルが先陣争い
2006.04.14−企業向けの検索市場が本格的に立ち上がりそうだ。日本オラクルとグーグルが12日、それぞれ製品のリリースを発表した。最近では社内に分散した知識や情報を共有化するために企業情報ポータル(EIP)などの導入が活発化しているが、検索機能が弱いとされる場合も多いため、それを補完する技術としても注目できる。両社の製品とも「15分でインストールから設定までを行える」(オラクル)、「ケーブルを差して30分でセットアップ完了する」(グーグル)と導入が容易なことが特徴。企業向け検索システムはまさにこれからの市場であり、今後の先陣争いが注目される。
- マイクロソフトがWindowsVistaの新機能を公開、ゲイツ会長が会見
2006.04.22−マイクロソフトは21日、来年1月に一般発売が予定されている次世代OS(基本ソフト)「WindowsVista」に関する報道機関向け説明会を開催。家庭向けと企業向けに用途を分けて、最新のカスタマーテクノロジープレビュー(CTP)版を使って実際の機能をデモンストレーションした。統一メッセージは「クリアな視界を提供する」こと。家庭向けでは操作性の向上と洗練された画面、そして簡単に高いセキュリティが実現できること、企業向けでは社内におけるパソコンの運用・展開・管理コストの大幅な削減が可能になることなどが強調された。
- SAPジャパンがオンデマンド型CRMサービスに参入、インハウス移行も容易
2006.04.27−SAPジャパンは25日、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)アプリケーションをインターネット経由のサービスとして提供する「SAP
CRM On-Demand」を日本でスタートさせると発表した。インハウス型パッケージの「mySAP CRM」の機能性をそのまま引き継いでおり、台頭が目立つオンデマンドサービス市場に本格参入する。ただ、インハウス版への将来的な移行を考慮したサービスとなっていることが他社との違い。対象も500ユーザー以上の大手・中堅企業に絞っており、オンデマンド版で市場に切り込みつつ、インハウス版の導入に結びつけることが隠れた狙いともいえそう。
- NECがロボットの動作を再現するエージェントソフトを開発、PDAでも稼働
2006.05.10−NECは9日、パーソナルロボット「PaPeRo」の振る舞いを記述したシナリオプログラムを、実際のロボットがなくても起動・再現できるエージェントソフトウエアを開発したと発表した。専用開発環境の「RoboStudio」(ロボスタジオ)に組み込み、作成したシナリオの動作検証をパソコン上のCG(コンピューターグラフィックス)を使って行うことが可能。ロボット用プログラムの開発効率が高まる。また、今回のエージェントはPDA(携帯情報端末)などのモバイルデバイスでも動作させられるという特徴があるため、同社では今後さまざまな用途の可能性を探っていくことにしている。
- マイクロソフトがWindowsCCS早期普及へ新戦略、エクセルとの統合実現
2006.05.17−マイクロソフトは、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)市場への新規参入を目指す「Windowsコンピュートクラスターサーバー2003」(Windows
CCS)の早期普及を図るための新戦略として、オフィスソフトの次期バージョン「2007 Office」との連携ソリューションを開発した。エクセルの計算エンジンを大規模なシミュレーションに利用できるようにするもの。
Windows CCSは、Linuxよりも簡単にPCクラスターを構築・管理できることが特徴だが、科学技術計算分野を中心にした第3者アプリケーションの移植を推進するとともに、同社独自のOffice連携を実現することで、新しいユーザー層の取り込みを狙っていく。
- Sematicsが純粋数学的手法の日本語解析エンジンを開発、技術供与開始
2006.06.17−Sematics(本社・東京都港区、吹谷和雄代表取締役)は15日、独自の数学的手法を用いた日本語解析エンジン「Perceptrons
Engine」(パーセプトロンエンジン)を開発したと発表した。辞書を持たず、統計的確率論モデルとトポロジー(位相空間)を用いた純粋数学的手法で日本語の正確な意味を読み取ることが可能。高精度の機械翻訳やテキストマイニングなどに利用することができる。同社はこのエンジンを広くライセンスし、各種のソフトウエアやサービスへの組み込みを図っていく。次年度から米国展開も進め、2008年度に120億円の売り上げを見込んでいる。
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